ゲームシナリオ入門|物語を面白くする6ポイント

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今回は「ゲームシナリオを面白くするポイント」について解説します。

シナリオ術、物語論、脚本術などの参考文献を読んだうえで、ゲーム制作に使いやすい要点をまとめました。

前半では、ゲームに限らない「物語全体」に関する話をします。後半では、ゲームならではのシナリオ設計について見ていきます。

1. なぜ物語が大事なのか

ゲームにおいてシナリオが重要かどうかは、意見が分かれるところです。

「ゲームはシナリオよりゲーム性だ」と考える人もいれば、「いや、物語があるからこそゲームに没入できる」と考える人もいます。

ここでは、どちらが正しいかを決めるのではなく、心理学や脳科学の視点から「そもそも物語とは何なのか」を考えてみます。

人間の脳は物語を理解しやすい

人間の脳は、物語を記憶しやすく、回想しやすく、理解しやすいようにできていると言われています。

たとえば、単なる情報の羅列よりも、「誰が、何を求めて、どんな困難にぶつかり、どう変わったのか」という形のほうが、私たちは自然に理解できます。

このあたりの話は、『ストーリーが世界を滅ぼす』という本が非常に参考になります。物語とは何なのか。人はなぜ物語を好むのか。物語は人間にどれほど影響を与えるのか。そういったテーマが深く掘り下げられています。

つまり、物語には人の考え方や行動を変える力があるわけです。

ゲームには2つの物語がある

ゲームには、大きく分けて2つの物語があります。

  • ゲームそのものの物語
  • プレイヤー自身の体験としての物語

ゲームそのものの物語とは、作品内で描かれるストーリーです。

たとえば『スーパーマリオワールド』なら、ピーチ姫がクッパにさらわれ、マリオが助けに行く話です。『ドラゴンクエスト』なら、竜王がローラ姫をさらい、光の玉を奪ったため、勇者がそれを取り戻しに行く話です。

一方で、プレイヤー自身の体験としての物語もあります。

たとえば『スーパーマリオワールド』を、いつ、どこで、誰と、どのように遊んでいたのか?というプレイヤー自体の記憶、それがプレイヤー自身の体験としての物語です。

名作『クロノ・トリガー』で言えば、以下のような感じ。

  • ゲームそのものの物語:壮大なBGM、タイムトラベル、感動的なエンディング
  • プレイヤー自身の体験としての物語:1995年に友達の家で遊んだ記憶

ゲームを作るときは、この2つを意識する必要があります。

ただし、この記事で扱うのは主に前者です。つまり、ゲーム内で語られる物語の質をどう上げるか、という話です。

2. 三幕構成

物語を作るときは、型があると考えやすくなります。

その代表的な型が「三幕構成」です。

三幕構成は、映画脚本の世界でよく使われる考え方です。脚本家シド・フィールドによって広く知られるようになった、ハリウッド脚本の基本形でもあります。

導入・対立・解決

三幕構成は、簡単に言えば次の3つです。

  1. 第一幕:導入
  2. 第二幕:対立
  3. 第三幕:解決

第一幕:導入

第一幕では、舞台や人物を説明し、物語のきっかけとなる事件を起こします。

ポイントは、「日常が崩れること」です。

『クロノ・トリガー』で言えば、主人公クロノは千年祭の日に目覚めます。最初はごく普通の少年として描かれます。

しかし、お祭りで出会った少女が、幼なじみの作った転送装置の実験中に消えてしまう。ここで日常が崩れ、物語が動き始めます。

第二幕:対立

第二幕では、主人公が何かと対立します。

それは敵キャラクターかもしれませんし、社会の仕組みかもしれません。あるいは、自分自身の弱さや価値観かもしれません。

『ジョジョの奇妙な冒険』で言えば、ジョナサンとディオの対立が分かりやすい例です。2人は性格も価値観も正反対で、そのぶつかり合いが物語を引っ張っていきます。

『進撃の巨人』のように、倫理観そのものが対立する作品もあります。何が正義で、何が悪なのかが単純に決められないため、読者や視聴者も物語に深く引き込まれます。

『クロノ・トリガー』では、タイムトラベルの途中で未来の世界が滅んでいることを知ります。そこから、「滅びる未来を変える」という大きな対立軸が生まれます。

第三幕:解決

第三幕では、対立を経て、問題が解決します。

『クロノ・トリガー』なら、ラスボスを倒し、未来を救うことが解決にあたります。

もちろん、必ずしもハッピーエンドである必要はありません。ホラーゲームなどでは、解決したように見えたあとで、さらにひとひねり加えることもあります。

たとえば『魔女の家』では、トゥルーエンドに進むことで、むしろバッドエンドのような後味が残ります。これもまた、強い印象を残す構成です。

ヒーローズジャーニーという考え方

三幕構成をさらに細かく分解したものとして、「ヒーローズジャーニー」という考え方もあります。

これは神話学者ジョーゼフ・キャンベルが、世界中の神話に共通する構造を分析したものです。

日本神話、ギリシャ神話、ネイティブアメリカンの伝承など、地域や文化が違っても、英雄の物語には似た流れがある。そこに注目したわけです。

この考え方は、映画『スター・ウォーズ』にも大きな影響を与えたと言われています。

さらに、クリストファー・ボグラーが映画向けに整理したことで、ヒーローズジャーニーは脚本術として広く使われるようになりました。

ざっくり言えば、三幕構成をさらに細かく12段階ほどに分けたものです。物語作りに迷ったときの設計図として使えます。

3. キャラクターアーク

物語を作るうえで、非常に重要なのが「キャラクターアーク」です。

キャラクターアークとは、簡単に言えば「主人公が物語を通してどう変化するか」です。

物語とは、主人公の変化である。

私たちは、主人公が何かにぶつかり、悩み、成長し、変わっていく姿に感情移入します。

逆に、主人公が何も変わらない物語は、どこか物足りなく感じられます。事件は起きているのに、主人公の内面がまったく動いていないと、「結局なんだったの?」となりやすいのです。

対立・葛藤・変化

主人公の変化は、次の3つの流れで考えると分かりやすくなります。

  1. 対立
  2. 葛藤
  3. 変化

まず、主人公は何かと対立します。

その対立によって、自分の弱さや価値観を揺さぶられます。そこで葛藤が生まれます。

そして最後に、主人公は何かしらの変化を得ます。

たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティは、侮辱されるとすぐ怒る短気な性格です。その欠点によって問題が起こりますが、物語を通して彼は変化していきます。

『ロード・オブ・ザ・リング』のサムも分かりやすい例です。フロドと一緒に旅をする中で、サムは数々の困難に直面し、葛藤し、最後には大きく成長します。

つまり、三幕構成という物語の骨組みがあり、そこに主人公を置く。そして主人公は、対立・葛藤・変化を通して成長する。

これが、物語を面白くする基本のひとつです。

4. セーブ・ザ・キャット

次に紹介するのは、「セーブ・ザ・キャット」というテクニックです。

これはブレイク・スナイダーの著書『SAVE THE CATの法則』で有名になった考え方です。

簡単に言えば、物語の冒頭で主人公の好感度を上げておくテクニックです。

冒頭で「悪いやつではない」と伝える

セーブ・ザ・キャットとは、主人公が弱い存在を助ける場面を早い段階で見せることです。

たとえば『アラジン』では、主人公アラジンが冒頭でパンを盗みます。これだけ見ると、ただの泥棒です。

しかし、そのあと彼は、お腹をすかせた子どもたちにパンを分け与えます。

この場面によって、観客は「アラジンは盗みをするけれど、根っから悪い人間ではない」と理解します。

『シュガー・ラッシュ』でも似た場面があります。ラルフは乱暴で不器用なキャラクターですが、弱い存在に優しくする場面によって、根は優しい人物だと分かります。

このように、冒頭で主人公の人間味を見せておくと、読者やプレイヤーはそのキャラクターについていきやすくなります。

最初に嫌われると取り戻しにくい

キャラクターの第一印象は非常に重要です。

最初に嫌な印象を持たれると、あとから「実はいいやつだった」と説明しても、印象を取り戻すのは簡単ではありません。

漫画やゲームでも、最初に不快な行動をしたキャラクターが、後から急に善人として描かれると、どこか白々しく感じることがあります。

もちろん、あえて嫌われるキャラクターとして設計するなら問題ありません。しかし、主人公や重要キャラクターに好感を持ってもらいたいなら、冒頭で「この人には助けたい理由がある」と伝えておくほうが安全です。

後から好感度を取り戻すより、最初に嫌われないように設計する。

これがセーブ・ザ・キャットの強みです。

5. シナリオ分岐

ここからは、ゲーム特有のシナリオ術です。

ゲームは映画や小説と違い、必ずしも一本道ではありません。プレイヤーの選択や行動によって、ルートや結末を変えることができます。

これが、ゲームシナリオの大きな特徴です。

たとえば恋愛ゲームなら、攻略するキャラクターによってルートが変わります。『アマガミ』で言えば、中多紗江ルートもあれば、森島はるかルートもあります。

『クロノ・トリガー』では、どのタイミングでラスボスを倒すかによってエンディングが変わります。恐竜人に支配された世界になったり、魔族に支配された世界になったりと、プレイヤーの進行状況が結末に影響します。

分岐には理由が必要

シナリオ分岐で注意したいのは、ルートと結末の整合性です。

つまり、「なぜその選択をしたら、その結末になるのか」が分かるようにする必要があります。

Aルートを通った結果、Bエンドに到達する。その理由に矛盾がないか。ここを確認することが大切です。

『クロノ・トリガー』で言えば、過去の世界で恐竜人と原始人類の戦いに介入するかどうかによって、未来の状態が変わります。これは「過去を変えたから未来が変わる」というルールに沿っているため、納得感があります。

『魔女の家』でも、トゥルーエンドへ進むには、最後の追いかけっこで特定のアイテムを手に入れる必要があります。アイテムを持っているかどうかが分岐の理由になっているため、ルートの変化に説得力があります。

逆に、理由の分からない分岐はプレイヤーを置いてけぼりにします。

「なぜこの選択でこの結末になるの?」と感じた瞬間、プレイヤーは物語ではなく、作者の都合を見てしまいます。

シナリオ分岐を作るときは、選択・行動・結果のつながりを意識しましょう。

6. ミニマルライティングとウィンドウサイズ

最後は、ゲームシナリオにおける文章量の話です。

ゲームの文章は、できるだけ短く、分かりやすく書く必要があります。

これをここでは「ミニマルライティング」と呼びます。

ミニマルライティングとは何か

ミニマルライティングとは、必要最小限の言葉で伝える文章術です。

文章においては、飾りすぎることが必ずしも良いとは限りません。

文学っぽいなと思ったら書き直すことです。

エルモア・レナード

語彙の乏しさを隠すために、いたずらに言葉を飾ってはいけない。

スティーブン・キング

スティーブン・キングは『書くことについて』の中で、学生時代に文章を添削された経験を語っています。無駄な修飾語を削られ、「結果が分かればいい」と教えられたことが、非常に大きな学びになったそうです。

ゲームシナリオでも同じです。

文章を長くすれば深く見えるわけではありません。むしろ、情報が多すぎるとプレイヤーの理解を妨げます。

絵・音・演出で伝わることは書かない

ゲームには、小説にはない表現手段があります。

  • SE
  • ME
  • BGM
  • ピクチャー
  • アニメーション
  • マップ演出

これらで伝えられる情報は、わざわざ文章で説明しなくても構いません。

たとえば、次のような文章があったとします。

彼は雪道をザッザッと音を立てて歩いた。その足音の深さから、雪が10cmほど積もっていることが分かる。

小説ならこれで問題ありません。

しかしゲームなら、雪のエフェクトを出し、足音のSEを鳴らし、主人公を雪道で歩かせれば、それだけで伝わります。

つまり、ゲームでは「文章で説明する」のではなく、「画面と音で体験させる」ことができます。

絵で見せられることは絵で見せる。音で伝わることは音で伝える。文章は、文章でしか伝えられないことに使う。

これがゲームシナリオでは重要です。

分かりにくさは離脱につながる

人は、理解できないものにストレスを感じます。

文章が難しすぎる。説明が長すぎる。何を言っているのか分からない。

そう感じた瞬間、プレイヤーは物語から離れてしまいます。

難しいゲームに出会ったとき、プレイヤーは必ずしも「自分の腕が悪い」とは考えません。むしろ、「このゲームの設計が悪い」と感じることがあります。

文章でも同じです。

分かりにくい文章は、作者への不満につながります。

だからこそ、ゲームのセリフや説明文は、できるだけ短く、分かりやすくする必要があります。

ウィンドウサイズを意識する

ゲームの文章には、表示できる枠があります。

漫画や小説と違って、ゲームではメッセージウィンドウに表示できる文字数が限られています。

たとえばRPGツクールなら、1行に入る文字数や表示できる行数が決まっています。そのため、ウィンドウ内に収まるように情報を整理する必要があります。

具体例を見てみましょう。

悪い例:

この文章は、言いたいことに対して少し長すぎます。

まず、結論と理由を抜き出します。

  • 結論:セリフの文字数は減らしたほうがいい
  • 理由:文字が多いと読むのが面倒になるから

これを短くすると、次のようになります。

改善例:

セリフは少ない方がいい。文字が多いと読むのが面倒だからな。

結論と理由だけにすると、一気に読みやすくなります。

ゲームのセリフでは、「何を伝えたいのか」と「なぜそうなのか」を残し、それ以外を削る意識が大切です。

もちろん、回りくどい言い方をするという設定のキャラの場合はこの限りではありません。その辺は柔軟に。

情報が多いときはキャラを分ける

情報量が多いときは、1人のキャラクターにすべて話させるのではなく、複数のキャラクターに分ける方法もあります。

たとえば、次のセリフを見てください。

1人で全部説明する場合:

まさか、社員数が3万人を誇る悪の巨大企業、BBG社が今回の事件の黒幕なわけ? 上司が残忍極まりない残業を要求するBBG社が……。

情報が多く、少し説明っぽく見えます。

これを3人に分けると、こうなります。

複数人に分ける場合:

モブコ
モブコ

まさか、今回の黒幕はBBG社!?

モブオ
モブオ

やれやれ、社員数3万人の大企業かよ

ラマ
ラマ

しかも、容赦なく残業を要求するブラック企業ですな

言っている内容はほぼ同じです。

しかし、キャラクター同士の会話にすることで、情報が自然に入ってきます。

ゲームの場合は、立ち絵を切り替えたり、表情を変えたり、SEを入れたりできます。文章量を減らしながら、画面に動きを出すこともできます。

説明が長くなりそうなときは、「1人で語らせる」のではなく、「会話に分解する」と読みやすくなります。

まとめ:ゲームシナリオを面白くするポイント

ポイント要点
1. なぜ物語が大事なのか人間の脳は、物語を記憶しやすく、理解しやすい。ゲームには「作品内の物語」と「プレイヤー体験の物語」がある。
2. 三幕構成物語は「導入・対立・解決」で考えると作りやすい。日常が崩れ、対立が生まれ、最後に解決へ向かう。
3. キャラクターアーク物語とは主人公の変化である。主人公は対立・葛藤・変化を通して成長する。
4. セーブ・ザ・キャット冒頭で主人公の好感度を上げておく。最初に嫌われると、後から印象を取り戻すのは難しい。
5. シナリオ分岐ゲームならではの複数ルートやマルチエンディングでは、選択と結果の整合性が重要になる。
6. ミニマルライティング文章は最小限にする。絵・音・演出で伝わることは文章で説明しない。ウィンドウサイズも意識する。

ゲームシナリオを面白くするには、ただ設定を増やすだけでは不十分です。

物語の構造を作り、主人公を変化させ、プレイヤーが納得できる分岐を用意し、文章はできるだけ短く分かりやすくする。

ゲームには、絵・音・操作・演出があります。

だからこそ、すべてを文章で説明する必要はありません。

プレイヤーに「読ませる」のではなく、「体験させる」。

この意識を持つだけでも、ゲームシナリオはかなり読みやすく、遊びやすくなるはずです。

参考文献は多いため、ここではすべて紹介しきれませんが、特に『ストーリーが世界を滅ぼす』『SAVE THE CATの法則』『書くことについて』あたりは、シナリオや文章術を学びたい人におすすめです。