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ゲームを作るとき、「プレイヤーに熱中してほしい」と誰もが願うはずです。
楽しく遊んでもらいたい。逆に言えば、途中で離脱されたり、飽きられたりするのはできるだけ避けたいですよね。
では、人を夢中にさせるゲームには、どんな共通点があるのでしょうか? この記事では、その条件を4つにまとめて紹介します。
実は2018年頃から、心理学の世界では「サービスに人を引きつける仕組み」の研究が盛んになりました。
Facebook、Twitter、YouTube、ソーシャルゲーム——こうしたサービスはいずれも、今回紹介する「WNGFの法則」に近い考え方を取り入れて成長してきたと言われています。
WNGFの法則とは、次の4つの言葉の頭文字を取ったものです(順番に優劣はありません)。

- W — Winnable(勝てる予感)
- N — Novel(斬新な課題)
- G — Goal(目標)
- F — Feedback(報酬・結果)
この4つを満たすゲームほど、プレイヤーを長く楽しませやすい。順番に見ていきましょう。
1. Winnable(勝てる予感)
適度に勝てるゲームは人を熱狂させる
「適度に勝てる」という予感のあるゲームは、たとえ中身が単純作業であっても、人を強く熱中させます。
分かりやすい例が、ソーシャルゲームのガチャやスロットマシンです。ガチャそのものに、ゲームとしての面白さはほとんどありません。
ボタンを押すだけのくじ引きですから。それでも私たちが引きつけられるのは、「適度に当たりが出る」という予感があるからです。
興味深い話があります。カジノでスロットを回しているプレイヤーにアンケートを取ると、その多くが「つまらない」「本当はやりたくない」と答えるそうです。それでも、つい「やってしまう」。理由はやはり、適度に勝てるから。「5回に1回は勝てるかもしれない」という予感が脳の報酬系を刺激し、私たちを夢中にさせるのです。
勝てすぎても、負けすぎてもダメ
ここで注意したいのが、勝てすぎても負けすぎてもダメだという点です。難易度は、高すぎても低すぎてもいけません。
たとえば子どもの頃、友だちみんなでスマブラをやったとき、自分だけ下手でまったく勝てない——そんな時間は、たいていつまらなく感じたはずです。勝てる予感がないからですね。一方で、常に当たりが出るくじ引きが退屈なのと同じように、ずっと勝ててしまうゲームもまた、すぐに飽きられてしまいます。
勝率の目安は「20%」
では、具体的にどのくらいの難易度がいいのでしょうか。心理学の世界では、「20%ほど勝てる予感があるとよい」と語られることが多いようです。だいたい5回に1回は勝てる、くらいの感覚ですね。
もちろん、これは場面によって調整が必要です。たとえばスーパーマリオで、最初に出てくるクリボーを倒す成功率が20%だったら、それはただのクソゲーですよね。大切なのは「ステージ1をクリアできる確率が20%程度で、練習するほど上がっていく」こと。つまり、上達が目に見えるという形が理想的です。
難易度は「セレクト」と「テストプレイ」で調整する
この「勝てる予感(Winnable)」を調整するには、主に2つの手段があります。
- 難易度セレクト: バイオハザードでは、イージー・ノーマル・ハードの3段階が用意されていて、自分に最適な難易度を選べます。とくにアクションゲームで有効です。
- 第三者によるテストプレイ: 自分で作ったゲームを自分しかプレイしていないと、「思考の外側」になかなか気づけません。
テストプレイの大切さについて、私自身の経験を紹介します。昔、「正面からボスに話しかけて倒すと、ボスが後ろに下がって消えていく」という演出を作っていました。ところがテストプレイヤーが、横からボスに話しかけたんですね。するとボスは横に下がろうとするものの、そこには壁があって下がれず、バグって止まってしまった。これがまさに「思考の外側」です。難易度の調整についても、同じことが言えます。自分一人では、ちょうどいいバランスを見誤りやすいのです。
2. Novel(斬新な課題)
慣れてきた頃に、新しい課題を出す
プレイヤーは、ゲームを遊んでいるあいだにどんどん成長します。だからこそ、難易度がずっと一定のゲームは、おそらくあなたが遊んできたゲームのなかにも存在しないはずです。多くのゲームは、難易度が徐々に上がっていくように設計されています。
なぜなら、人は慣れてしまったことに退屈を感じるからです。どんなに好きなこと、楽しいことでも、慣れて飽きればつまらなくなる。ゲームも同じです。
いくら「勝てる予感」があっても、慣れて勝てる確率が上がりすぎると、いわゆる「ぬるゲー」になって、つまらなくなってしまうわけです。
具体例: 慣れた頃に強い敵が出てくる
- バイオハザード: ゾンビに慣れてきた頃に、リッカーというもっと強い敵が登場する
- スーパーマリオ: ノコノコに慣れてきた頃に、空を飛ぶノコノコ(羽付き)が出てくる
- ドラゴンクエスト: 始まりの街では攻撃ボタン連打で倒せた敵が、次の街に進むとどんどん強くなっていく
階段を一段ずつ上がるように、課題を1つクリアしては、少し上がった難易度をまたクリアする——こうして少しずつ登らせていくのが理想です。
新しいアイテムで、新しいゲームが始まる
アクションゲームやRPGでは、その「階段」をクリアするために、新しいアイテムを使わせるという手法がよく取られます。
たとえばバイオハザードでは、リッカーという強敵の登場を受けて、ショットガンなどの新しい武器を手に入れます。「銃を撃つ」という操作の難易度自体は大きく変わりません。それでも、新しい銃を手に入れ、それで敵を倒すという、また新しいゲーム体験が始まるのです。
RPGなら、新しい魔法を覚える、新しい武器を買う、新しい仲間が加わる——こうした要素で、同じように調整していけばよいわけです。
3. Goal(目標)
「前に進んでいる感覚」がモチベーションを高める
心理学では、「人のモチベーションを最も高めるのは、前に進んでいるという感覚だ」とよく言われます。
これを示す実験があります。テレサ・アマビルさんの本で紹介されていたもので、コーヒー店のスタンプカードを2パターン用意しました。すでにいくつかスタンプが押されているカードと、まっさらなカードです。結果として、すでにスタンプが押されているカードのほうが、モチベーションが上がって使われやすくなったといいます。少しでも「進んでいる」と感じられることが、人を動かすのです。
逆に、「これ、何のためにやってるんだろう?」と感じる作業は、つまらないものです。これはゲームに限りません。人生でも仕事でも、「自分は今、成長しているのかな」「何のためにやっているんだろう」という感覚は、モチベーションを下げてしまいます。
目的のない作業は、最も苦痛
「目的が見えないこと」がいかに苦痛かを物語る、印象的な話があります。
第二次世界大戦中、シベリアで捕虜になったアメリカ兵の手記です。ありとあらゆる劣悪な環境のなかで、彼が一番苦痛だと感じたのは、穴を掘らされることだったといいます。延々と掘らされ、掘り終わると今度は「よし、埋めろ」と言われる。何のためにやっているのか分からない作業こそが、最も苦しく、狂いそうなほどだったというのです。
これと同じで、何のためにやっているのか分からないゲームは、たちまち「クソゲー」になってしまいます。
目標は常に分かりやすく、できれば「非言語化」する
そのため、モダンなゲームでは、目標が常に画面上に表示されていたり、スタートボタンを押せば現在の目標を確認できたりします。RPGなら、メニューのなかに「挑戦中のクエスト」「次にやること」が掲示されているものも多いですよね。
これが抜群にうまいのが、スーパーマリオです。『ついにやってしまう体験の作り方』(任天堂の企画部長の方が書いた本)のなかで触れられているのですが、マリオのすごさは、マリオのグラフィックが右を向いていることにあるといいます。
操作はA・B・矢印ボタンだけ。当時、もっと複雑なゲームも作れたはずですが、あえてそうしませんでした。選択肢を減らし、誰が見ても「右のボタンを押して右に進むゲームだ」と直感的に分かるようにしたのです。これが、目標を「非言語化する」ということです。言葉で説明しなくても、見ただけで何をすべきか伝わる。
同じく『風ノ旅ビト』というゲームも、この「非言語化」が非常にうまい作品です。気になる方は、ぜひ一度プレイしてみてください。
4. Feedback(報酬・結果)
結果は、早く返さなければならない
プレイヤーは、自分が取った行動の結果を、できるだけ早く知りたいと思っています。逆に言えば、フィードバックがなかなか返ってこないゲームは、つまらなく感じてしまいます。
たとえばソーシャルゲームのガチャを回して、結果が出るまでに1時間かかったら、誰もやりませんよね。ボタンを押して10秒ほどでパッと結果が出るからこそ、みんな夢中になる。しかも、その10秒すら待てない人のために、スキップ機能まで用意されているわけです。
アンチャーテッドとラストオブアスに学ぶ「速さ」
この点が抜群にうまいのが、ノーティードッグ社のアンチャーテッドやラストオブアスです。プレイヤーが何かをしてから、その結果が返ってくるまでの速度が、とにかく速い。
アンチャーテッドは、壁をよじ登りながら進んでいくゲームです。間違った場所に飛べば転落して死にますが、主人公のネイトは、進める場所に向かって自然と手を伸ばします。それを見たプレイヤーの中に、「あ、あそこに行けるかも」という期待が生まれる。実際にやってみてミスなら、すぐに転落。長々としたゲームオーバー演出はなく、死んだらすぐにやり直しです。
つまり、プレイヤーが仮説→検証→結果を回すスピードが、非常に速い。これがアンチャーテッドやラストオブアスの大きな特徴です。スーパーマリオも同じで、ダメならすぐにやられ、すぐにスタート地点へ戻る。余計な演出で待たせないのです。
SNSにも応用されているWNGF
近年では、この仕組みがSNSでも大いに活用されていると言われています。たとえばTikTokのスクロールは、まさにその典型です。
| WNGF | TikTokでの適用 |
|---|---|
| Winnable | どこかに自分の好きな動画があるという予感 |
| Novel | 新しい動画があるかもしれないという予感 |
| Goal | 好きな動画が見つかるかもしれないという目標 |
| Feedback | スクロールするだけで、すぐに次の結果が得られる |
WNGFの法則を頭に入れたうえで既存のゲームを遊んでみると、どこにこの4つの要素が隠れているのかが見えてくるはずです。とくに、コンシューマー機の良作には、この点が非常に丁寧に作り込まれている傾向があります。
まとめ
最後に、WNGFの4条件を振り返っておきましょう。
- Winnable(勝てる予感): 適度に勝てる予感があるゲームは、人を熱狂させる。目安は20%程度の勝率。難易度セレクトやテストプレイで調整する。
- Novel(斬新な課題): 慣れてきた頃に新しい課題を出し、飽きさせない。新しいアイテムで、新しいゲーム体験を提供する。
- Goal(目標): プレイヤーが「どこに向かっていて、どうすればゴールなのか」を常に分かりやすく示す。できれば非言語化する。
- Feedback(報酬・結果): プレイヤーは常に「仮説→検証→結果」を繰り返している。そのサイクルのスピードを上げることが重要。
参考文献
- 『残酷すぎる成功法則』 — WNGFの法則が紹介されている一冊。「こうだと思っていたけれど、実はこうだった」という例が豊富に載っている。
- 『ついにやってしまう体験の作り方』 — 任天堂の企画部長を務めた方による本。ゲームに隠された仕掛けと、その種明かしが分かりやすく解説されている。スーパーマリオ、風ノ旅ビト、ドラゴンクエスト、ラストオブアスなどを分析。アフォーダンスとシグニファイア(誘発する手がかり/それを示す目印)の概念も、平易に理解できる。

